小児歯科

● 乳歯の役割

乳歯はいずれ全て永久歯に生え変わってしまうため、あまり重要ではないとお考えではありませんか?そんなことはありません。 乳歯というのは、通常10~12歳ころまでに永久歯に生え変わります。 そして、子供の成長において大切な役割を持っています。その役割として、大きく分けて以下の2つが上げられます。

多くの言葉を学習していく幼児期は、歯が健康であることで、さ行など舌の筋肉を使った正しくキレイな発音を自然に覚えることが出来ます。逆に、ムシ歯などで歯が抜けてしまうと、発音がうまく出来ずに発音障害が生じてしまうこともあります。 それが積極的に発言しなくなったり、仲間に入っていくのをためらったりしていくことにつながりかねません。

乳歯から永久歯に生え変わる際、乳歯の根は吸収され次に生えてくる永久歯を誘導します。そのため永久歯の歯並びに大きく影響します。歯並びが原因で咬み合わせが悪い状態を放置しておくと、顎にズレが生じ、顔の輪郭が変形しまうことがあります。
そのことで、ふんばる力が養われない、集中力が長続きしない等の影響が出ます。


● 乳歯の性質

歯は未完成のまま生えてきて、お口の中で時間をかけて成長します。そのため、生えたばかりの歯はムシ歯になりやすく、しっかりケアすることが重要です。 またその中でも特に、乳歯のエナメル質は薄く、生えてきたばかりの状態ではとても弱い状態です。そのため、この時期はお子様の歯を丁寧にケアし、正しい歯磨きをしっかり教えてあげることが大切です。

● お子様のフッ素塗付

お子様の歯は生えたばかりでとても柔らかく、歯磨きもまだ慣れていないため、非常にムシ歯になりやすい状態と言えます。そのため当院では、お子様のフッ素塗布をオススメしております。 フッ素は、毎日の食事を通して私たちの体に摂取されている必須栄養素のひとつで、ムシ歯の原因であるミュータンス菌の働きを抑える効果や歯表面のエナメル質強化など歯にとてもいい効能があります。 そのため、世界各国でムシ歯予防として普及しています。 また、ご自宅でもご使用いただけるフッ素入り歯磨き粉などと一緒に使用することでより高い効果が期待できます。お子様の歯を一緒にケアしてあげましょう。

● 母子感染の予防

人の口移しなどで乳児へと感染していきます。その際、親の口腔内にミュータンス菌が大量にいる場合、あるいは小児が蔗糖をたくさん摂取している場合に感染がおこりやすいと言われています一旦感染してしまうと「ムシ歯にかかりやすい体質」になってしまい、一生ムシ歯菌と付き合わなくてはなりません。特に出産前の方は、これから生まれてくる子どものために自分の歯に関心を持ち、常にお口の中を清潔に保つことが大切です。

おやつには砂糖が少なく、口の中にとどまる時間が少ないものがおすすめです。例えば、果物や野菜を使ったデザート、ジュースよりお茶や牛乳がよいでしょう。少なくとも、永久歯が生え揃い免疫機能が完成する12歳まではお菓子をはじめとする砂糖の量をコントロールする必要があります。

● 感染の窓

歯が生えていない乳児にはムシ歯菌はいません。 ちょうど乳歯が生えだしてから、生え揃うまでの生後19カ月から31ヶ月(平均26カ月)の間に初感染が集中することから「感染の窓」と呼ばれています。 この時期の乳児、そして母親、家族の口腔ケアに注意し感染時期を遅らせるだけでもムシ歯になるリスクが減少します。

 このグラフは、母親の口腔ケアと子供のムシ歯の関係性を実験したものです。二つのグループに分け、片方のグループの母親に衛生指導や専門家によるクリーニング、薬物による除菌療法などのケアを実施しました。結果は、圧倒的にケアを行った方がムシ歯原因菌の検出率が下がり、母親の口腔ケアが大きく影響していることがわかります。

Mutans Streptococcus(ミュータンス菌)から乳児の歯を守るためには、正しい知識と家族単位の口腔ケアが重要です。 しかし、ムシ歯菌の感染を予防するために親子のコミュニケーション(接触)を避ける方向ではなく自分自身の口腔を清潔に保つことが子供の口腔衛生につながることを理解し、口腔ケアに臨みましょう。